東京高等裁判所 昭和32年(う)1290号・昭32年(う)1289号 判決
被告人 三上喜一郎 外一名
〔抄 録〕
弁護人の各控訴趣意第一点について。
しかしながらあへん法第五十二条にいわゆる「営利の目的」とは広く財産的利益を得る目的を指称するものと解すべく、(覚せい剤に関する東京高等裁判所昭和三十一年十月十七日判決(高等裁判所刑事裁判特報第二巻第二十号一〇五二頁以下)、麻薬に関する広島高等裁判所同年二月二十七日判決(同特報第三巻第五号一七七頁以下)の各趣旨参照)また、同法第七条第一項にいわゆるあへんの「譲渡」又は「譲受」とは、必ずしも売買、贈与、交換、消費貸借等所有権の移転を伴う場合に限らず、売買の委託等これが処分権を賦与して占有を移転し又はこれを取得するが如き行為をも含むものと解するのを相当とする(麻薬に関する最高裁判所昭和二十八年十二月二十四日第一小法廷判決、(同裁判所刑事判例集第七巻第十三号二六五七頁以下)及び同裁判所昭和二十七年四月十七日同小法廷判決(同判例集第六巻第四号六七八頁以下)覚せい剤に関する高松高等裁判所昭和二十九年十月五日判決(前同特報第一巻第八号三五〇頁以下)の各趣旨参照)ところ、原判決挙示の関係証拠によれば、被告人赤平重春は被告人三上喜一郎及び同岡卯一から本件あへんの売却換価方を依頼されるや、右両名からこれが謝礼金を受ける意図のもとにこれに応じ、更に被告人斎藤長寿に対しその売却方を依頼してこれを交付し、被告人斎藤長寿も、また、被告人赤平重春から応分の謝礼金を得る意図をもつてこれを承諾し、右あへんを受領したこと、その他被告人赤平重春にかかる原判示第二、被告人斎藤長寿にかかる同第三の一の各事実を認めるに十分であるから、被告人両名の右各所為は敍上の趣旨に照らし原判決が認定判示したとおりそれぞれ営利の目的をもつて不法にあへんを譲り受けたものに該当すると言わねばならない。その他記録を精査しても原判決には毫も所論の如き理由のくいちがい若しくは事実誤認の瑕疵あることを認め得ない。原判決が右各所為をそれぞれあへん法第五十一条第五十二条第七条第一項の罪に問擬したのは正当であつて、各論旨はいずれもその理由がない。
(三宅 河原 遠藤)